FC2ブログ

十三話 我王と黒鎧

「避けろ!」

そう叫んだ瞬間に、ゴーレムは振りかぶった巨大な拳を振り下ろした。
土が飛び、草が散る。
その一撃で小さなクレーターができたように地が抉れたのを見て、全員が冷や汗をかいた。

「流石、大々的に盗賊名乗ってないってわけね……ずいぶんヤバいもの持ってるわ」
「危険」

タバサとキュルケは杖を構える。
ルイズも杖を構え、ポケットの石を空いた手で握りしめた。

「でぇぇぇぇぇっ!!!」

一方サイトはゴーレムに向かって駆けると、一気にデルフリンガーでゴーレムに切りかかった。
右手首を上から切り上げて落とし、刃を持ち手を変えてから右足に一閃。
後ろからキュルケとタバサがフレイムボールとウィンディ・アイシクルで援護射撃するが、その魔法はほぼ効いていないようだった。

「……硬い」
「ルイズ、あんたの使い魔だけよ活躍してるの!
 あんたの魔法で援護しなさいよ!」
「今やってる!」

小石を幾つか取り出し、錬金。
光った瞬間にルイズはその石を放り投げた。

「離れなさいサイト!」
「了解……っ!」

ゴーレムの肩を足場に跳躍してゴーレムから離れると同時に、ルイズの爆弾が着弾する。

「やった!」

崩れていくゴーレムを見て喜ぶルイズとキュルケ。
しかし、タバサとサイトは警戒をやめなかった。

「…………!」
「きゃあっ!
 ちょ、何するのよ!?」

タバサはルイズを担ぎ上げると、後ろに飛び退いた。
ルイズがいた場所には、大きな土の槍が天に向かって生えていた。

「……危うく串刺し」
「地の利があっちにありすぎるわね……っていうか、土があるところならあっちはなんでもいいわけ?」

崩れた土は再び集まると、ゴーレムの姿に戻ってしまった。

「きりがないな……どうする?」
「どうもこうも……あっちの魔力がなくなればこっちの勝ちよ!」

ルイズは小石をさらに錬金して投げる。
その手製の手榴弾は低空で爆発。
ゴーレムの足を半分ほど削って見せた。

「やった!?」
「なわけねーだろ!
 さっさと逃げろ!!」

削れた足など気にも留めず、ゴーレムはルイズに殴り掛かる。

「デルフ!」
『おうよ!!』

サイトがデルフに声をかけると、デルフが光った。
刀身はさらに巨大に。そして錆びた色は紫色の革を貼り付けた無骨な両刃の巨剣と化した。
骨を削ったようなその刃はわずかに金属の光沢を伺わせ、その切れ味を想像させる。

「族長の大剣【我王】」
『派手にぶちかますぜぇ!』

片手で肩に担いだ大剣をそのまま垂直に振り下ろすと、向かってきたゴーレムの拳と拮抗する。
が、その拮抗は一瞬であった。大剣と拳がぶつかり合った場所から、腕一本が肩まで砕け散った。

「いいぃっ!?」
「……理不尽」

キュルケとタバサは異なる反応を見せるが、どちらも共通して驚愕している。
あのゴーレムの強靭な腕を、一撃で粉々にしてしまったのだ。
驚くなという方が無理である。

「行くわよサイト!」
「おうとも!」

ルイズが目の前の地面を錬金する。
これもサイトと二人で考えた魔法。
名付けて“ゼロマイン”。
ただ地面の一角を錬金によって爆発させるだけの魔法である。
マインと言ってる割に爆発はすぐに起きてしまうのはこれいかに。
まぁ、それもサイトがいることで解決する。

「ゼェイ!!」

我王で地面を抉り取ると、そのまま剣の腹でゴーレムへと弾き飛ばし、撃ち込む。
爆発する直前であった土は、バラバラになってゴーレムへと降り注いだ。
一つ一つの土が一瞬にして爆発物へ。しかも一つ一つが火のライン、フレイムボールをしのぐ威力をもってゴーレムを砕く。

「っ!やった!?」
「あ!馬鹿!そうやってフラグを立てちゃあ……」

爆風によって作り出された土煙を、黒い豪腕が切り裂く。
どこにそんな魔力があるのか、フーケは更なる錬金を施したらしい。
ゴーレムは、いまだ健在であった。

「おいおい、嘘だろこれ……なんでこいつが……!」
「ゴーレム……?」

それも、先ほどのゴーレムとは比べ物にならない威圧感と、殺気をもって。

「黒鎧竜……“グラビモス亜種”……!?」

-----------------------ッ!!!

暗い森に響き渡る咆哮。
黒き鎧を纏いし龍と、狩人の使い魔が、今、邂逅を果たす。
龍の紅い眼には、ただただ燃えるような憤怒があった。





























もう本当にこんなのでいいのか悩みましたが、とりあえず投稿しないと失踪とか言われちゃう。
一応私の最低限がこちらでございます。
文才欲しいっす。
スポンサーサイト



十二話 破壊の杖と再戦

「ミス・ロングビル。
 どうして御者を自分で?
 手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」

馬車でフーケの隠れ家に向かう最中、キュルケがロングビルに話しかける。肩越しに少しだけ顔をこちらに向けながら、ロングビル苦笑をうかべ答えてきた。

「……いいのですよ。私は、貴族の名を無くした者ですから」
「だって、あなたはオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」

そう問いかけるキュルケ。
先程とは少し変わって、寂しそうな顔つきでロングビルは答える。

「ええ。……でも、オスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘らないお方ですから」

表情は微笑んではいるものの、やはり哀しそうに見える。
言うなれば、没落貴族という奴なのだろう。
何故貴族ではなくなったのかにいささか興味が湧いたが、サイトは珍しく人のプライバシーを尊重した。

「(なんか重い話みたいだしな)」

サイトは、スカッとするような冒険活劇や、コメディが好きだ。
恋愛はどこかこそばゆくて見なかったし、ホラーなんかは怖さを楽しむものだが、サイトはどれだけ評判のホラー映画や漫画を見ても、全く怖いとは思えなかった。
ましてや感動モノのドキュメンタリー番組なんかは、面白くもなんともない。
お、おう……。
ってなもんである。

「(っていうか……さっきから俺睨まれまくりじゃねーか……)」

先ほどから、無言になったキュルケが睨んでくる。
もう少しロングビルと話していて欲しかった。
助けてご主人様とルイズに顔を向けると、何故かタバサと意気投合していた。
こっち向いてmaster。
談笑してんな助けろ。

空気が悪い。
こいつ苦手……!




























「着きましたわ」

馬車は小屋があるという場所の少し手前で停止した。
次々と出て行く皆の中、何故かキュルケがサイトの方を見る。

「べー」
「…………」

思いっきり子供だった。

「アンタ、ツェルプストーに何したの?」
「いや、何もしてねーけど……なんかしちまったのかね?」

二人は揃って首をかしげた。

































明らかに怪しい小さく古い小屋。
そこに土くれがいるらしい。

「人の気配がしない」

タバサが小さな声で囁く。

「でも、中に居る可能性もあるわけでしょ?」

そのタバサに疑問を向けるキュルケは、先ほどのサイトに向けての行動とはうって変わり、少し真剣身を帯びたものになっている。
ルイズもその空気を感じ取ってか、顔を強張らせた。

「偵察に行く。
 私が先行するから合図をしたら来て」

皆が総じて頷くと、タバサは素早く小屋に近づき、ドアを開け侵入した。

「では、私は少し回りを見てきますわ」
「えぇ、お願いします」
「…………………」






















「これが破壊の杖?
 中身は……見ない方が良いかしら?」
「そうでもないと思う」

彼女たちが覗き込む箱の中に無造作に入っていたのは、立派な箱。
とりあえず開けてみると、中に入っていたのは深緑色の筒。

「これ、杖なの?」
「ディティクトマジックに反応は無い」
「っていっても、これが破壊の杖なんでしょ?
 明らかにキレーな箱に入ってるし」

三人が話し合っているのを、サイトは輪の外から眺めていた。
しかし、内心動揺していたのは確かである。

「(ありゃあ……俺の世界の兵器?)」

兵器にはあまり詳しくないため良く分からないが、ここの科学力のそれとはまったく趣が違う。
ここは中世ヨーロッパ程度の科学力のレベルだったはず。
いや、まさか練金でここまでできるというのだろうか。

「フーケは見つかんなかったけど、破壊の杖取り戻したし……いいかな?」
「そうねぇ……外、出ましょうか?」
「待って、何か来る」

小屋が揺れる。
この振動を、タバサは感じた事があった。

「フーケのゴーレム」
「嘘!?」

ルイズが驚き、破壊の杖を抱きかかえる。

「とりあえずこっから出るぞ。
 ここじゃアイツが出てきたときに潰されちまう」

総じて頷き、外に出る。
その入り口は、巨大なゴーレムによって影に覆われていた。











































「彼女たち、大丈夫でしょうか」

コルベールは、学園長室でロングビルの代わりに書類を片付けていた。

「あの少年がいれば、大丈夫じゃろ?
 あやつ、ただもんじゃないからの。
 前なんてフーケのゴーレムぶった斬ってたしの」
「遠見の鏡って便利ですね本当に」

というかこのエロ爺が犯罪まがいの事をしていないかが心配な所である。

「それにしても、こう、なんというか落ち付かんのう……」
「何がです?」

どこか不自然に手をわきわきとさせる。
ちょっと引くくらいの動きだ。

「こう、なんというか……華が無い」
「そうですかそうですか、では、速く仕事を片付けてミスロングビルを待ちましょう」
「いやじゃー!街に繰り出したいんじゃー!
 ウェイトレスのメイドさんとにゃんにゃんしたいんじゃー!」

どこの世界の話をしているのか。












































間を切りすぎてちょっとおかしなことになってます。
もうどうしたらいいのよ。
次回に続く!いや、続け!頼む!

十一話 杖にと狩人の魂に

トリステイン学院の一室に全教師が集められた。
その中の人間は皆一様に渋い顔をしている。
教師のそんな姿を見ながら、部屋の隅に座り込んでいるサイトは面白そうに見ていた。

「宿直の方は何をしていらっしゃったのか……まったく理解に苦しみますな」

とある教師が、シュヴルーズを横目で見ながらそう言い放つ。
シュヴルーズは俯いてしまった。


なぜこのような集まりがあったのかと言うと、昨日貴族専門泥棒である“土くれ”のフーケが現われ、学院に伝わる秘宝“破壊の杖”を奪い、逃走したのである。
優れた実力を持つ教師の目を掻い潜り、スクウェアクラスの固定かをも突破し、秘宝を奪った。
当然、責任は教師が持つことになる。
故に彼らは責任の擦り合いをしているのだ。
だが、そんなことをしている場合ではないと、オスマンが騒ぎを治めると、コルベールに尋ねた。

「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この三人です」

コルベールがそう言って、後ろに控えているキュルケ達を差した。
サイトは部屋の隅で胡坐をかいており、その横にはルイズが壁に寄りかかっていた。
平民で使い魔のためかサイトは数には入れなかったようだ。

「ふむ、君たちか…詳しく説明してくれるかね?」
「はい」


キュルケが一歩前に出る。
その真っ赤な髪を揺らしながら、昨日の事態を事細かに説明した。





わかりやすいかいせつ

キュルケ&タバサ学院に到達と同時にゴーレムと戦闘開始

再生とかマジ卑怯

サイト&ルイズ到着

こんなのハンターじゃねぇ!

「マ○ドゥ先生の作ったB○よ!」

以上



「ふむ、なるほどの。
 わかった、諸君らの勇気、非常に誇らしく思う」

オスマンはそう労うと、教師諸君に向けて声をかける。

「さて、諸君。
 生徒達は勇気と貴族の誇りを持って盗賊に立ち向かった。
 今度は……我々の番ではないのか?」
「しかし、オールド・オスマン!
 相手はもしかしたらスクウェアかもしれんのです!
 それも歴戦の!彼女たちが生き残ったのも、奇跡としか言いようが無い!」

そう言うと、教師たちは皆眼を背ける。
怖いのだ。それは誰だって死にたくは無い。
そんなとき、ドアが開いた。


「おや、ミス・ロングビル。
 探していたぞ、今の今まで一体どこにおったのじゃ」

今まで不在だった秘書のミス・ロングビルが、興奮した様子で現れた。

「盗賊フーケの足取りを、追っていました」
「なんと!?」

教師は皆驚いた表情でロングビルを見つめる。
何でも、逃走中のフーケを見たという農民がいたらしく、そのことについて詳しく調査したところ、森の近くの廃屋に黒いローブを羽織った人間が入っていったという情報を掴んで来たようだ。

「その森までは、馬車で数刻程行ったところじゃな……。
 最早、一国の猶予もならん!生徒でさえ戦った相手に、何をおびえているのじゃ皆の衆!」

オスマンはフーケを捜索する者達を募り出したが、案の定誰も名乗りを上げない。
王室へ報告しよう、という案も出た。しかし、それをしている間にフーケは逃げてしまうだろうということ、侵入された魔法学院の沽券にも関わるということで却下された。
そんな議論をよそに、腹を抱えている男が一人。

「ど、どうしたのサイト。
 お腹痛いの?」

そう、サイトだ。
やがて体を震わせると、サイトは一気に吹き出した。

「ひっひひひひひひひひひーひゃはははははっ!!!!!
 ……あー、笑った笑った。
 ぷっ、いや、すんません!
 あのね、あまりにその……ね?
 あれだったもんで、ぷっ」

いまだ笑いが収まらないらしく、口を押さえながら床に置いたデルフリンガーを腰のベルトに鞘ごと差込む。
そして、右手をあげて言い放つ。





「俺が行く。
 俺が、そのフーケって野郎をとっちめればいいんだろ?」





教師は驚愕する。
平民が、しかも使い魔が。
主を差し置いて賊を退治するといったのだ。
少し、困惑の中にあったルイズも、杖を掲げた。

「ミス・ヴァリエール!
 何をしているのです?」
「誰も掲げないじゃないですか!」

ルイズがキッとなって叫んだ。
確かにそうだ、皆、『誰かがなんとかしてくれる、だから自分はやらなくていい』そんな安堵と不安の入り交じった表情をして、サイトとルイズを見ていた。
だからルイズが杖を上げても、一斉に反対したりせずにガヤガヤと話し込むだけ。

「そこらへんの偉そうにしてる貴族様達は?
 行かないんだよな?だって、誰もあげねーし。
 だったら俺とルイズでいいだろ?
 なあ、じいさん」

オスマンに同意を求めるような視線を送る。
しかし、今度はキュルケとタバサが杖をあげ始めた。

「ヴァリエールには……負けられませんわ」

が、その視線は何故かサイトに向いている。
タバサの視線も前を向いているようで、ちらちらとサイトへ向いていた。

「心配……」

オスマンはその四人を見据えると、少し考え込み、そして笑う。

「そうか、では頼むとしよう。
 くれぐれも、くれぐれも注意してくれ。
 君たちを失いたくは無いのでな」
「本気ですかオールド・オスマン!!
 この子達は生徒ですぞ!」

コルベールが心底心配そうな表情でオスマンに問い詰める。
が、オスマンは涼しい顔その問い詰めを回避し、言った。

「彼女たちは敵を見ている。
 ミスタ・コルベール。君が思うほどに、生徒達は弱くないじゃろう」

オスマンはタバサを見つめてこう言う。

「ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておる。
 実力もお墨付きじゃろうて」
「えっ? 本当なのタバサ!」
「……一応……」

キュルケやルイズはおろか、教師たちですらその言葉に、驚愕していた。
本人は一応と言ってはいるが、『シュヴァリエ』の称号は純粋に行なった偉業の数によって与えられる、いわば実力の証明でもあるのだ。
最下級とはいえ、それをこんな年端も行かぬ少女が持っているのだから、周囲は驚きを隠せず、ただただ少女を見つめるだけだった。

「そして、ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」

次いでそう言うオスマンの言葉に、キュルケはまったくの無関心でサイトを睨んでいる。
当の本人はまったく気にしていないようだが。

しかし、オスマンの言葉が詰まった。
褒めることが見当たらない。ルイズは座学は優秀だったが、実習となると点でだめだったからである。
しばらく心の中でう~んと唸りながら、言葉を探り探りにして選ぶように言った。

「ミス・ヴァリエールは……その、数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、うむ、なんだ……少々あれだが、爆発の威力は測りしれん」
「なんがか褒められた気がしないわ」

ルイズはぼそっと呟く。

「そして、その使い魔は。
 平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘し、そして傷ひとつ追うことなく勝利したという噂だが」

実はこれは結構有名なので大して驚きは起こらなかった。
サイトにしてみれば、退屈が無くなればどうでもいいのだが。

「そんな彼らじゃ。
 きっとやってくれるじゃろうて」

オスマンは思う。
ギーシュとの決闘、あの時の身のこなし、そして謎の剣。
決してフーケ相手にも遅れをとったりしないだろう。
彼があの伝説のガンダールウなら――。
隣でコルベール、彼女らに心配そうな眼差しで何か言いたそうなのを目で制して、改めてオスマンは四人を見据える。

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

それに応えるように、三人は直立し、「杖にかけて!」と唱和してスカートの裾をつまみ、恭しく礼をした。
それがよくわからなかったサイトは、デルフを掲げ、こう呟く。







「狩人(ハンター)の魂にかけて……面白くしてくれよ?」




こうして、サイト達は、フーケ搜索のため目的の廃屋へと出発することとなった。

続きを読む

土くれと破壊の杖

「おや、ミス・ロングビル。
 このようなところで何をされているのですかな?」

虚無の曜日。
コルベールが昼食をとろうと食堂に向かう最中、学園長秘書であるミス・ロングビルが、学園の宝物庫の前で唸っていた。

「あら、ミスタ。
 いえ、昨日、宝物庫のリストを作れと学院長から言い渡されたのですが……。
 今日来てみたら、生憎鍵がかかっていまして」

本当に困った。そんな顔で宝物庫の扉をちらっと見る。
もちろん、そんな顔で見ても扉が開くはずが無いのだが。

「学院長に鍵をもらいに行けばよろしいのでは?」
「えぇ、先ほど行ってみたのですが、どうやら御就寝中だったようでして……」
「なるほど……それでは仕方がありませんな……」

コルベールは、しばし考えるしぐさをすると、少し照れくさそうにこう切り出した。

「その……今から昼食に行くのですが、ご一緒にどうですかな?
 学院長が起きるまでのお暇潰しにもなるかと」

ロングビルは、先ほどのコルベールと同じく、考える仕草をすると、笑顔でコルベールに向いた。

「そうですね。
 ご迷惑でなければ、ご一緒しても宜しいですか?」
「ご迷惑等とんでもない。
 是非ともご一緒に」
「ふふ、ありがとうございます」

コルベールは、彼女の笑みに違和感を感じたが、特に気にとめなかった。









ズズゥン……!

『着いたぞルイズ。』

「『…………』」

トリステイン魔法学院の近辺の森に、紅い龍が舞い降りる。
その背中には、桃色の髪の少女と、古びた剣が一本。
剣の方は顔が無いため分からないが、少女は疲労の色を見せている。

『いやぁ、空って意外と気持ちいいもんだな。
 どうだったよ、デルフリンガーは』
『なんつーか……相棒、竜になるってどうなのさ』

赤い龍、リオレウスは自らの背中を見る。
飛び立つ寸前はあんなにはしゃいでいた少女、ルイズが真っ白に燃え尽きている。
いや、はしゃいでいたからこそだろうか。

「あれ、ルイズ一杯一杯?」
「いや……ちょっと休憩してるだけ……」

竜が光を放つと、その光は収束していき、光が収まったそこにいたのは、白い髪に赤い瞳の平民……平賀サイトがルイズをおぶっている姿。
初めて空を飛んで、はしゃぎすぎたのだろう、少し眠そうにしていた。

「むふ……(サイトは……竜になれるし、剣だって強い……凄い使い魔呼んじゃったかも……)……えへへぇ……」
「まったく……部屋まで運ぶか……デルフ、ちょっくらごめんよ」
『ん?何がだよ相棒……ってうわぁっ!』

次元の裂け目に吸い込まれていくデルフ。
なんだか最後に叫び声が聞こえたが、気にしないことにした。

「さて……ルイズ、起きろ。
 自分の足で歩きなさい」
「なによ……使い魔なんだからおぶっていってくれてもいいじゃないの」

ルイズは拗ねたようにそう言うと、サイトの体にしがみつく。

「はぁ……はいはい、わかったわかった。
 部屋についたら降りろよ?」
「いーからさっさと運ぶ!
 これは命令なんだからね!」









再びトリステイン魔法学院宝物庫――――

「…………。」

あたりは少し暗くなっていた。
夕焼け空が段々と暗闇へと変わっていく。
その中で、黒いローブを被った影が一つ。
ローブの隙間から、少し緑色の髪が見えている。

「…………あいつは……いないね。」

黒いローブは周囲を確認すると、杖を取り出し、詠唱を始めた。

「(あの平民……あたしにとって、恐らく天敵だ。)」

黒いローブ……ミス・ロングビルはサイトの決闘を見ていた。
自分も、経験はかなりあると自負している。
しかし、彼には勝てる気がしない。

「ふん……まあいいさ……。」

詠唱を終えて、ロングビルは杖を一振りする。
土が草をかき分けて盛り上がっていく様を、彼女はどこか自嘲するかのような笑みで見つめる。

「あの平民が来ないうちに……やるしかないね。」

“土くれ”が、巨大なゴーレムへと変わっていく。
これが、彼女の二つ名の由来。
今の彼女はロングビルではない。

「いきな!」
貴族専門泥棒“土くれのフーケ”がそこにいた。









「なに……あれ……。」

キュルケとタバサは、タバサの使い魔、風龍“シルフィード”で学院に戻ってくる最中で学院に巨大な影が現れたのを見た。
目測にして、2~30メイル程の巨大な影である。

「……多分ゴーレム……。」
「嘘!?
 あんなデカいの見たこと無「捕まって」ち、ちょっとぉ!?」

キュルケが声を荒げると共に、タバサはシルフィードを加速させた。
キュルケは急な加速に思わずタバサにしがみついた。

ムニュ

「…………ちっ」
「?」


























「ん?なんだありゃ……。」サイトがルイズをおぶって学院に向かう途中、竜が空を駆けていくのが見えた。
ついでに、その竜の上の人物も。

「タバサと……キュルケだったっけ?」

よく注意してみると、横顔からどこか切羽詰まった感じがした。
その視線の先、魔法学院までは、もう少し。

「こりゃあ学院に何かあったか……?」
「何、どしたの?」
「いや……ちょっとな」

退屈しのぎにはなりそうだ。









サイトが学院に到着すると、黒い巨大な影が壊れた宝物庫に手を入れ、何かを掴み取っていた。

「ルイズ!」
「え!?あ、れ、錬金!」

ルイズは、ポケットから小石を取り出すと、杖を向けて錬金の魔法を唱える。
それが光った瞬間、ルイズは全力でそれを影に投げつける。
コツンという音が鳴った瞬間、影の相対していたタバサとキュルケに向かって叫ぶ。

「伏せろ!」
「!!」
「ちょ、何!?」

爆発。
これが、ルイズの武器、“セルフ手榴弾”である。
ちなみに命名サイト。
ルイズが石を錬金して、爆弾に変えるなんとも荒々しい技であるが、威力は抜群。
影の左腕が呆気なく粉砕した。

「ナイスルイズ」
「あ、当たり前よ!」

サイトはルイズを下ろすと、影を真正面に見据える。

「土……ギーシュのゴーレムの強化した奴みたいなもんか……」

ゴーレムの吹き飛んだ腕に、土がまとわりつき、そのまま腕を振り下ろす。

「おっと」

左に一歩移動してかわし、ポケットからデルフリンガーを取り出し、斬る。
土でできた腕は根から離れると、ただの土くれに戻った。

「デルフ、出番だぜ?」
「いきなり武器庫的な場所にご招待されたと思ったらいきなり出番かよ!
 剣使いが荒いぜ相棒!」
「そういうなって!」

再び相対するサイト。
巨大なゴーレムがサイトを見下ろす。
その迫力に、サイトは興奮が止まらない。

「ク……ククク……いいじゃんいいじゃん!
 退屈なんざありゃしねぇ!」

笑いながら、ゴーレムに向かって行く。
迎撃をしようと、ゴーレムが拳を振るが、サイトは跳躍し、ゴーレムの腕を走る。
肩にたどり着いた時、腕を根元から両断した。

「オラオラオラァ!
 こんなもんでいいのかゴーレムちゃんよぉ!」

叫ぶサイトが居る自分の肩に、ゴーレムはもう一つのサイトを掴もうとするが、サイトは迫り来るゴーレムの指を残らず叩き斬ると、ゴーレムから飛び降りる。

「デルフ、お前最高」
「見た目に騙されちゃいけねーってこった。
 そうだろ相棒?」

着地と同時にバックステップ。
後ろ向きのままゴーレムの足元へ。
腕を確認すると、もう半分再生していた。

「こういうのは、核となる部分があるか、操ってる奴がいるって相場が決まってるんだがな……っ!」

足をぶった斬る。
バランスを崩し、ゴーレムは膝をつく。

「もういっちょ!」
「おうよ!」

もう片方の足を切り裂き、足元から離脱する。
ちょっと無理な体勢だったので、少し飛んでゴーレムを足場にし、崩れ落ちるゴーレムの残骸を回避した。

「ルイズ!
 ラスト任せた!」
「えっ、ちょ、わ、わかった!」

ルイズは慌てつつも石を手の上に並べ錬金。

「キュルケとそこのアンタ!
 離れないと巻き込まれるわよっ!」
「…………了解」
「ちょ、タバサ!?」

タバサがいち早くフライで離脱。
キュルケも遅れて離脱する。
ゴーレムの残骸が集合し、再生を始めるその前に。

「吹っ飛びなさい!」

ルイズの石爆弾が着弾した。









宝物庫の内側の壁。
そこに、文字が刻まれていた。
真新しいものだ。
大穴の開いた宝物庫の壁から差し込む月光がそれを照らす。



-------破壊の杖、確かに頂きました。
-----------土くれのフーケ

武器屋とボロ剣

ギーシュの案内で、一行は武器屋へと向かった。

「こっちに“ピエモンの秘薬屋”があるから……あった、ここだ。」

そこは、如何にもな武器屋だった。
看板は剣の形の小さいのが、店先にぶら下がっていて、サイトは、『武器はちゃんと装備しないと使えないぜ!』としか言わない村人Bあたりが出てくるかと思った。

「じゃあ僕らはピエモンの秘薬屋に行ってくるからここでお別れだ。」
「あぁ、ありがとなギーシュ。」

軽く手を振ると、ギーシュはモンモランシーに腕を掴まれ、引きずられていった。

「あいつ、尻にしかれそうだなぁ。」

サイトがぼそっと呟くと、ルイズは頷いた。







武器屋の中は、サイトが先程行った店と同じように薄暗かった。
西洋の鎧やら何やらが乱雑に置かれ、棚や壁には槍に剣、盾等がかけられていた。
店主は入ってきた客が貴族だと知ったのか、愛想笑いを浮かべながらルイズに声をかけた。

「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさぁ。
 お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありやせんぜ?」

ルイズは腕を組むと、店の中をぐるりと興味深そうに見回し、

「客よ。」

と言った。

「こりゃおったまげた……。
 貴族が剣を!おったまげた!」

店主は心底驚いたような表情でルイズを見た。

「どうして?」
「いえ、若奥さま。坊主は聖具を振る、兵隊は剣を振る、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで……。」

店主が決まり文句のような流れでそう言うと、ルイズが口を開く。

「使うのはわたしじゃないわ。使い魔よ」
「忘れておりました。
 昨今は貴族の使い魔も剣を振るようで……。」

そう言うと、店主はサイトを訝しげに見た。

「……こちらの旦那がお使いになるので?」
「えぇ、そうよ。」
「はぁ……そうでございますねぇ……最近は盗賊も出るらしいですから、下僕に剣を持たせる貴族様も多いようで。 若奥様もその類で?」
「盗賊?」
「えぇ、さようで。」

店主ははっきりと頷く。

「なんだか知りやせんが、貴族専門の泥棒、“土くれ”のフーケとか言う盗賊が世間を騒がせているとかなんとか。
 物騒なこの御時世です。
 少しでも安心したいんでしょうな、貴族様達は。」
「なる程ねぇ……ってあれ?
 サイト?」

話を聞いていたルイズは、自分の使い魔が横にいないことに気付いた。
ふと、店の奥を見ると、サイトが剣や槍の入った籠を漁っていた。

「色々あるんだなぁ……。」
「ちょっとサイト、恥ずかしいからやめなさい。」

あ、悪い。と、ルイズの横に戻ってくる。

「で、剣のことはよくわからないから、こいつに適当なの見繕ってやって。」
「へい、かしこまりました。」

そう言って店の奥に消えていく店主。
それを見送ると、サイトは周りを見渡した。

「しっかしまぁ……大抵の武器に魔力があるな。」

サイトはこの世界に来た影響か、魔力を肉眼で見ることが出来るようになっていた。
ちなみに、それに気が付いたのはつい昨日のことである。

「そりゃそうよ。
 武器には“固定化”の魔法が施されているのが普通だわ。」
「“固定化”?」

ルイズの話によると、固定化というのは物体をそのままの状態に保つ為の土属性の魔法だと言う。
学院の壁や剣等の武器にも使われ、スクウェアのメイジが固定化をすると、数百年以上もその姿のまま固定されることもあるらしい。

「へぇ……ルイズって頭いいんだなぁ。」
「と、当然よ!
 これでも実技以外はトップなんだから!」

少し嬉しそうなルイズであった。









しばらくして、店の奥から一本の剣を携えた店主が出てきた。

「良い剣がありましたぜ。
 かのシュペー侯の名作!
 どうですか?」

店主が差し出したのは美しい装飾の施された剣だった。
それを見て、どうやらルイズは気に行ったらしい。

「ほら、これ綺麗よ!
 これにしなさいよ!」
「えー……?
 でもさぁ……これ、魔力少ないんだもん……。」

そう、見えているサイトには分かるのだ。
固定化が甘いのか、ただの装飾剣なのか分からないが、魔力が非常に少ない。

「これ、ただの飾るための剣じゃねーの?
 おっちゃん、もっといいの無い?」
「はぁ!?
 うそだろ?これは二百エキューもしたんだぞ!?」
「……それは御気の毒に……。」

サイトは同情の視線を送った。

『ざまぁねぇな親父!
 そこにいる野郎の方が目利きがいいじゃねえか!
 素人に負けてどうすんだよ!』
「んだとゴラァ!
 てめーは黙ってろデルフ!
 黙んねーと貴族様に頼んで溶かしてもらうぞ!!」

どこからか声が聞こえてきた。
が、店内には店主とルイズ、そしてサイト以外にはいないのだが。それでも、サイトの耳は声のした方向を探り当てていた。

「うーん……ここか?」
『うわっ!
 なんだてめぇ!?』

サイトが掴んだ一振りの剣。
それは見るからに錆びたボロボロの片刃の剣だった。

「お前が喋ってたのか?」
『なんだおめーは、真っ白じゃねえか。
 小麦粉でもかぶったのか?』
「地毛だよ。」

店主は「やっちまった……。」と、天を仰ぎ見ていた。

「インテリジェントソード?
 随分珍しいわね?」
「へぇ、誰が考えたんでしょうなぁ。
 剣に喋らせるなんてぇのは。
 来る客来る客全部になんかこう……いいやがるんで……。
 その癖売れやしないんですよ。
 こいつを作ったメイジは、暇だったんでしょうなぁ。」

そんな店主の話等聞いてもなく、サイトは驚愕していた。
剣を持つまでわからなかったが、先程店主が持ってきた剣の百倍、いや、それ以上の魔力を内包していたのだ。

「ルイズ、俺コイツがいい。」
「はぁ?
 そんなボロボロのでいいのあんた。」
「うん、こいつがいいんだ。」

サイトはその錆びた剣をルイズに差し出した。
ルイズがため息を混じりに口を開く。

「これ買うわ。
 いくら?」
「へっ?
 あ、へい、わかりやした。
 こいつでしたら百エキューで十分でさ。」
「そう、これお金ね。」

ルイズが会計を済ませてる間に、サイトは剣と会話していた。

「なぁ、お前なんでこんなとこにいたんだ?」
『知らねーよ。
 っていうか、俺は“使い手”以外に振るわれる気はねえぞ。』
「冷たいなぁ。
 名前位教えてくれたっていいだろ?」
『俺はデルフリンガーだよ。
 名乗ったんだから元に……?』

と、ここでデルフリンガーは無い口を閉ざした。

「おい、どうしたんだよデルフリンガー。」
『……いや、おめぇ、ちょっとわかりにくいが……“使い手”……なのか?
 色々混ざってゴチャゴチャしてるような……そんな感覚だ……。』
「“使い手”?」
『うん、お前面白そうだしな……いいぜ、お前さんに買われてやるよ相棒。』

使い手という単語の意味はわからなかったが、とりあえずは目的をクリアである。























「よし、帰るか!」
「あ、今度もあのドスジャギィとかいうのになってよね?」
「え?
 もっと早いのあるけど?」
「はぁ?」
「空、飛んでみない?」
「……空?」
『空って、あの空か?』
「紅に染まりし鱗。
 その双翼を羽ばたかせ降臨せよ!
 天空の王、リオレウス!」


















森に、少女と剣の悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。
プロフィール

めたるみーと。

Author:めたるみーと。
アニメやゲームのキャラを自分の子供に勝手に認定するめたるみーと。(フリーター)です。
嫁?なにそれおいしいの?

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR