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第六話 介旅初矢の奇妙な冒険 前篇

「う……!」

介旅初矢は背中に感じる痛みに目を覚ました。
先ほどまで、自分は多重能力者(マルチスキル)のレベル5と戦って……いや、あれは嬲られていただけではないか。
あたりを見回す。
白い霧が辺りを包んでいて、まったくと言っていいほどに周りが何も見えない。

「ここは……あれ……?
 バッグ……?」

そこにあったのは自分が抵抗するためにアルミ製品を詰め込んだバッグだった。
スプーンひとつでも結構な威力の爆弾となる今の彼の能力は、この得体のしれない世界の中で、とても頼れる存在だった。

「入ってきたなら……出口があるはずだ」

誰に言うでもなく、自分が信じたいがために口に出す。
願わくば、何事も起こらぬままここから抜け出せるように。







































そんな願いは、次の瞬間塵と消えた。

「ひっ……!?」

黒と桃色の縦縞の模様が白い霧に浮かぶ。
目のない口。
なんとも形容しがたい異形が、五匹。
こちらを見て(?)舌なめずりをしていた。

「な、なんだあれは……?」

明らかに敵意をむき出しにこちらを見て(?)いることは、彼にもわかった。

「く、くそっ!」

対抗するためにスプーンをバッグから取り出した。
彼の能力である量子変速(シンクロトロン)は、簡潔に言えばアルミを爆弾に変える能力である。
本来ならレベル2の彼には、アルミを爆弾に変えるほどの力はない。
しかし、レベルアッパーでレベルを上昇させた今、彼はレベル4ほどの力を持っていた。
化け物の強さは不明だが、その力さえあれば退けるくらいは可能なはずである。

「喰らえ化け物ォ!!」

スプーンが宙に放られると、化け物の額(?)に当たり、そして爆発。
初矢は油断せず、さらにスプーンを煙の中に投げ込んだ。
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ。
最終的に、十三のスプーンを投げ込み、爆発させた。
言わずもがな、それだけの爆発に耐えられるはずがなく、煙が晴れた場所には化け物はいなかった。

「……ふぅ……」

安堵の溜息をつく。
焦ってしまったが、ここは性格な居場所も見当つかない異世界のようなものだ。
アルミが都合よく落ちているとは限らない。
まだまだあるにはあるが、少し節約しなければ。
先ほどのような化け物が出ないとは限らないのだから。

「にしても、霧が濃いな……目の前が見えない……」

目を細めると、建物が見えた。
白い壁に、相当大きな建物のようだ。

「ここは……?」

キョロキョロとあたりを見渡すと、どうやら学校らしいことがわかる。
だが、奇妙なことに気づく。
ここに、見覚えがある。

「そう、毎日。
 ほとんど毎日ここを見ている……?
 なんだこの奇妙な感覚は……」

既視感。
まったく知らないはずの異世界で、彼は既視感を感じていた。
見たことがあった。この正門も、床も、下駄箱も。

「ここ……は……」

正門に入り、導かれるかのごとくふらふらととある場所を目指す。
それは、校舎裏だった。

「ハァ……ハァ……!!」

頭が、警笛を鳴らす。
ここに行ってはいけない!危険!危険!危険!
だが、足は止まらない。
そしてそこにたどり着いたとき、介旅初矢は自分を見た。

「……なんだこれは……」

横たわる自分の姿。
そばに落ちる空の財布。

「なんだよこれはぁっ!!!」
『……憎い』

どこからか聞こえる声。
いや、元はわかっている。
この自分の声で、自分が喋っている。
目の前の、自分が。

『憎い……なんで僕を助けてくれないんだ……先公も、“風紀委員”も……。
 所詮、弱いだけの屑だからか……?
 クラスメイトも、そこらにいる学生も……なんで……』

自分の思考。
何故、何故助けてくれない。

『弱い……僕は弱い……』
「ち、違う……!」

ゆっくりと立ち上がる自分。
目の前の自分に恐怖を覚えた。
これはなんだ。
違う、違う。
僕は弱くなんかない……。

『そうだろ?
 僕を守ってくれないものなんか、いらない。
 弱い僕を守ってくれよ、頼むよ。
 やさしくしてくれよ……皆、僕を守ってくれよ……』
「違う!違う!!僕は、弱くなんかない!!
 レベルアッパーで、強くなったんだ!!
 誰にも負けないくらい!!」
『いいや、弱いさ……肝心な部分で逃げる。
 あのマルチスキルにだってそうだ。
 途中で力のせいにして逃げたこと、僕はちゃあんと知ってるさ……。
 弱いってわかってるんだ。
 だって、お前は僕で、僕はお前なんだから』

にたにたと、目の前で笑う自分。
本当にこれは自分なのか。
いや、それはどうでもいい。
問題は、自分の姿で自分を弱いと貶める自分である。

「黙れ!」
『僕は弱い』
「黙れ!」
『お前は弱い』
「黙れ!
 もう僕は昔とは違うんだ!!
 お前なんか……!
 



















 お前なんか僕じゃない!!!
























あけましておめでとうございます。
今年も頑張ります。
新年早々前後編に分けてしまいますが、ご了承ください。
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Author:めたるみーと。
アニメやゲームのキャラを自分の子供に勝手に認定するめたるみーと。(フリーター)です。
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